映画 『TAKESHIS'』 | coffee house  

映画 『TAKESHIS'』

 久しぶりに映画館に行って、北野武監督の『TAKESHIS'』を観ました。まあ小説でも映画でもそうなんだけれど、パッと1回観た(読んだ)だけで好き嫌いを判断できるほどに僕の頭のできはよくないので、今の時点であれこれいうのは難しいけれども、きっとこの映画は僕の気に入るんじゃないかなぁと(観終わった)今は思っています。

 

 きっとこの映画はみんなあれこれ考えて、論理的帰結というか、理論的解決というか、構造の解析というか、とにかくこの映画から理性的に何かを読み取ろうとするんだろうけれども、どうやら僕にはそれは無理そうです。僕は人の言動からその人の頭の中をいちいち解析するような趣味はないので、この映画もやっぱりなんだかよくわからないけれども凄い事、面白いことを考えるというか思っている人がいるんだなぁという程度でおしまいです。

 

 ストーリーはそんなに複雑じゃないです(というか単純です)。噂が先行して「どうやら難しい映画らしいぞ」という先入観が出来上がりつつありますが、そんなに肩肘張らずに観ていればそれなりにすっと映画の世界に入り込めます。天才科学者が人の頭の中を覗き見る装置を発明して、誰か他人の頭の中に入り込むことができるとすれば、きっとこの映画を観るような奇妙な体験になるんだろうなぁと思います。

 

 人の頭の中(妄想)は時間軸も論理性も倫理観も飛び越えたカオスみたいなものなので、あまり深く理由を求めないほうが得策ではないかなぁと思います。そういう面倒な役割は専門家に任せて、僕らは考えるんじゃなくて、体験する側に廻った方が良いですよ、きっと。コンピュータの仕組みを考えるのが一部の専門家であるのと同じように、映画の仕組みを考えるのは映画評論家に任せましょう。

 

 とにかく、この映画を「ある一人の男の妄想」として捕らえるのならば、やっぱり僕の妄想や想像とはレベルが違います。なんというか凡人には妄想し得ない領域の、芸術家(=変人)にしか見えない妄想の世界のようです。その芸術家の(頭の中の)世界を垣間見ることができるだけでも楽しいものです。

 

 『TAKESHIS'』 (北野武監督:2005年)